ANAのシニア空割は成功しないのではないだろうか。

全日空が「定額給付金で旅行に行こう!」と銘打って新たなサービスを展開している。
その中で一番目を引いたのが、「シニア空割」という名のサービスだ。

このサービス、上手く出来ているような気もするが、あまり利用されない気がする。
理由は下記。


・そもそも「当日の航空券」なので、旅行に行くにも慌しくなってしまう。当日に航空券を購入し、宿泊先を予約して旅行に行く、という行動力、瞬発力を発揮する65歳以上の人が数多く居るのか疑問であること

マイレージカードを持っていない、かつ、インターネットを使えない人には敷居が高いこと

マイレージカードを持っていたとしても、インターネットを利用出来なければ、旅行会社に行って宿泊先を予約し航空券を購入する、という手間をかけなければならないこと

マイレージカードを持っていて、インターネットを利用出来たとしても、航空券の購入はインターネットで出来ないため、旅行会社・空港で買わなければならないという手間は発生すること

マイレージカードを持っていない人は、上記に加え、事前にANAのウェブサイトよりマイレージカードを作っておかなければならないという手間が更に発生すること

これらのめんどくささにより、結局利用者は多くないのではないかと思う。


シニア空割とは
理由を説明する前に、シニア空割について簡単に説明しようと思う。
このサービスは、65歳以上のANAマイレージクラブ会員であり、尚且つ当日空席があれば、日本全国どこでも片道9,000円で行ける、というもの。


片道9,000円ということは、往復18,000円であり、65歳以上の一人当たり定額給付金20,000円以内の範囲内である。*1棚ぼた的に貰えるお金なので、上手くしたら旅行に使ってくれるかもしれない。
そして、65歳以上という、定年後で時間があるため、平日でも空席を照会して旅に行きやすい。だからシニア空割を使ってくれやすいかもしれない。
マイレージクラブというサービスを知らない65歳以上の人にサービスを認知させることが出来る。「マイルが貯まれば商品と交換出来る」ということを認知させることが出来れば、今後もANAを使うかもしれないし、カードを使ってマイルを貯めようとするかもしれない。


ANA側としては、当日の空席、つまり普通は中々売れそうにない航空券を売ることが出来るわけなので、効率よく儲けることが出来る。空席があってもなくても、どちらにしても飛行機は飛ばなければならないので、空席があるよりも、割り引いてでも乗せるほうが断然トク。


なので、ANA側としては素直にオイシイ


問題点
でも、「当日の空席」なので、旅行の計画が立てにくいのは、客側にとってかなりのデメリットだ。
当日の空席ということは、ホテル等の予約も空席を確認してからしなければならない。
それはかなりの負担なのではないだろうか。

65歳以上は、インターネットはほとんど使わないだろうし、空席を照会するとしたら、そもそも電話で空席を照会するだろう。電話で空席を照会した後は、旅行会社に行って航空券を買う。そして、ついでにホテルの予約等もするのだろう。
予約、航空券の購入の後に空港に行く(荷物を纏めていない場合はそれから纏めなければならない)。
これはかなりの手間なのではないだろうか。


また、インターネットで空席照会も出来るそうなのだが、インターネットからの購入は出来ないらしい。
あくまで航空券の購入は空港、または市内のANAカウンターと旅行会社のみ。
インターネットで空席照会をした後そのまま購入→ホテルもインターネットで予約、が出来れば、どこかに買いに行く手間も省けるし、かなり利用しやすいと思うのだけれども。*2


そしてそれ以上に、マイレージカードを使用して購入しなければならないのもかなりの手間だ。
持っていない人であれば、事前にマイレージカードを作っておかなければならない。


マイレージカードは、
・ホームページからの入会
ANAカウンター(市内・空港)での入会
しかない。


となると、そもそもマイレージカードを持っていない、かつ、インターネットが出来ない65歳以上の方(これが大半のように思う)は、
1.電話で空席を照会する
2.空港内のANAカウンターでマイレージカードに入会する*3
3.空港で航空券を購入する
という手順になってしまう。
この際、宿泊先はどうするのだろう。
勝手な思い込みだが、65歳以上の人で「とりあえず行ってみて、それから宿泊先を探そう」という方はほとんどいないと思う。
だとすれば、事前に予約していくはずだ。
インターネットが出来ない場合、宿泊先を調べる/予約する手段としては、旅行会社からの予約しかないように思う。
だとすれば、どこかで「旅行会社に寄る」というプロセスが発生する。

そうすると、
1.電話で空席を照会する
2.空港でマイレージカードに入会する
3.空港で航空券を購入する
4.空港内の旅行会社で宿泊先を探し、予約する

か、

1.電話で空席を照会する
2.旅行会社に寄って宿泊先を予約する
3.空港でマイレージカードに入会する
4.空港で航空券を購入する

の流れになってしまう。非常にめんどくさい
それに、航空券は取れてもちゃんと宿泊先が見つかるか分からないリスクも存在するように思う。
そのようなリスクを抱えて、非常にめんどくさいやり方で航空券を当日に買ってまで旅行をするだろうか。
それはないと思う。


マイレージカードを持っていれば、
1.電話で空席を照会する
2.旅行会社に行って航空券購入、宿泊先を予約する
のみなので、比較的ラクだけれども。


効率性、利便性を考えれば、インターネットからマイレージカードに入会し、インターネットから空席を照会し、宿泊先を予約する流れが綺麗なように思う。
この綺麗な流れからいけば、「航空券をインターネットで購入」があっても良さそうなのに、それがない
これは不親切なのではないだろうか。サービスとしては中途半端な気がする。
なので、旅行会社に寄って航空券を購入するか、空港で航空券を買わなければならない。


今まで見てきたように、
・そもそも当日の航空券なので、旅行に行くにも慌しくなってしまう。当日に航空券を購入し、宿泊先を予約して旅行に行く、という行動力、瞬発力を発揮する65歳以上の人が数多く居るのか疑問
マイレージカードを持っていない、かつ、インターネットを使えない人には敷居が高い
マイレージカードを持っていたとしても、インターネットを利用出来なければ、旅行会社に行って宿泊先を予約し航空券を購入する、という手間をかけなければならない
マイレージカードを持っていて、インターネットを利用出来たとしても、航空券の購入はインターネットで出来ないため、旅行会社・空港で買わなければならないという手間は発生する
マイレージカードを持っていない人は、上記に加え、事前にANAのウェブサイトよりマイレージカードを作っておかなければならないという手間が更に発生する


これらのめんどくささにより、結局利用者は多くないのではないかと思う。


改善策
せめて、航空券をインターネットから予約出来るようにするか、マイレージクラブ入会は航空券購入後でも可能にすれば、利用者はもっと増えるように思う。


この両方を変えれば、
マイレージカードを持っていて、インターネットを利用出来る人は、家で全ての予約・購入が出来るのでラク
マイレージカードを持っていなくとも、インターネットを利用出来る人も、家で全ての予約・購入が出来るのでラク
なので、今の状況よりも利用者は増えるのではないだろうか。


これに更に、「当日の空席」だけではなく「翌日の空席」も買えるようにしたら、数多くの65歳以上の人が利用するような気もするけれど。
色々手間がかかったとしても、前日から準備が出来れば、手間も問題でなくなる気がする。


気になること
これの宣伝はテレビでなかなか目にしないように思う。(私自身がテレビをあまり見ないから目にしないだけかもしれないけれども)
マイレージカードを使って、当日の航空券を照会して購入する、という分かりにくさを65歳以上の方に分かりやすく伝えるには、テレビで流れる15秒/30秒のCMでは難しいのではないだろうか。


また、宣伝は65歳以上が見るような雑誌等で宣伝しているのだろうか。
雑誌のような紙媒体であれば、ある程度は分かりやすく購入の仕方を伝えることが出来るかもしれない、と思う。

*1:定額給付金で〜というサービス名と合致している。

*2:ただ、そこまで65歳以上がインターネットを利用するか/利用出来るか、という点には疑問が残る

*3:ANAカウンターからマイレージカードに入会する、というのはあまり現実的ではない気がする。ANAカウンターは、全国に8ヶ所しかない。 http://www.ana.co.jp/sitehelp/share/rsv_ctr/dms/counter.html なので、市内のANAカウンターから入会する人はほぼいないと思える。